フィンランドの教育

仕事がらみで、あるシンポジウムを聴く機会がありました。
パネラーの1人だったのが、フィンランド教育に関して第一人者である北川達夫日本教育大学院大学客員教授
外交官として在フィンランド日本国大使館に8年在籍し、その後フィンランド、日本の双方で教材制作に携わっている方。
たいへん興味深いトピックスが多々あったので一部をご紹介します。


フィンランドは人口が520万人くらい。東国原知事のようなリーダーシップのある人が1人出ると割とすぐに物事が変わるくらいの規模とのこと

*最も古いフィンランド語で書かれた文学はたった138年前のもので、日本のような「古典」は存在しない。古くから伝わっている良いものを伝承する、というようなことがないかわりに、テストのために古典を必死に覚える必要がない

*1994年の指導要領改訂で「活用重視」に思い切って舵を切った。その結果PISA調査で2年連続世界1位を占めるにいたった。一方国内では字が汚い子どもが増えた、文法の誤りが増加、本を読まない子どもが増えた、などが問題視され、「基礎基本向上プロジェクト」に取り組んでいる

*1994年に教科書検定を廃止した。社会のテンポが日本と比較にならないくらいゆっくりなので、スピードアップが狙いだったそうだ。結果としてスピードアップにはつながったのだが、競争が激しくなった結果教科書は3社の寡占となり、価格がアップした

*教科書は無償貸与制となっている。学校に全種類揃えて単元により選んで使う、などという使い方ができる一方、生徒にあげられないという問題がある。
ちなみに2002年に行った教師へのアンケートで、「もし教育予算が使い放題だったら何をしたい?」という問いに対し、ダントツで多かった答えが「子どもに教科書をプレゼントしたい」だったそうだ

*塾や参考書、問題集のようなものが存在せず、学校しか勉強する場がない

などなど。


なにごとも長所と短所はウラオモテだということがよくわかりました。
何かが素晴らしいと言われているからといって無条件に全て受け入れるのではなく、よく実態を把握した上で、何を取り入れ何を取り入れないのか、取捨選択することが大切なのですね。
取り入れた方が良さそうなことも沢山ありそうなので、北川氏の著書「図解 フィンランド・メソッド入門」と「ニッポンには対話がない―学びとコミュニケーションの再生」を近々読んでみようと思います。