ローマ人の物語5 ハンニバル戦記(下)

年齢が、頑固にするのではない。成功が、頑固にする
・・・ゆえに抜本的な改革は、優れた才能はもちながらも、過去の成功には加担しなかった者によってしか成されない。しばしばそれが若い世代によって成しとげられるのは、若いがゆえに、過去の成功に加担していなかったからである。
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優れたリーダーとは、優秀な才能によって人々を率いていくだけの人間ではない。率いられていく人々に、自分たちがいなくては、と思わせることに成功した人でもある。持続する人間関係は、必ず相互関係である。一方的関係では、持続は望めない。
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ローマがカルタゴとの間に結んだ講和は、厳しかったかもしれない。だが、それは報復ではなかったし、ましてや、正義が非正義に対してくだす、こらしめではまったくなかった。戦争という、人類がどうしても超越することのできない悪業を、勝者と敗者でなく、正義と非正義に分けはじめたのはいつ頃からであろう。分けたからといって、戦争が消滅したわけでもないのだが。
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