ローマ人の物語6 勝者の混迷(上)

社会不安はしばしば、経済不安からはじまる。そして経済不安は、失業者の増加という形をとって姿をあらわす。
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失業者とはただ単に、職を失ったがゆえに生活の手段を失った人々ではない。社会での自らの存在理由を失った人々なのだ。・・・多くの普通人は、自らの尊厳を、仕事をすることで維持していく。ゆえに、人間が人間らしく生きていくために必要な自分自身に対しての誇りは、福祉では絶対に回復できない。職を取り戻してやることでしか、回復できないのである。
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人は、必要に迫られなければ、本質的な問題も忘れがちなものである。
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改革とは何であれ、金がかかる。・・・財源の確保に成功しなければ、改革も成功しないのだった。
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確固とした自負心のみが、劣等感に悩むという「地獄」に落ちるのを防ぐのだ。そして、過度な劣等感くらい、状況判断を狂わせるものもないのである。
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