ローマ人の物語24 賢帝の世紀(上)

女とは、同性の美貌や富には羨望や嫉妬を感じても、教養や頭の良さには、羨望もしなければ嫉妬も感じないものなのだ。
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空洞化とは、まず第一に人間の数の減少からはじまるのだから。
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人間とは、身銭を切って投資してこそ、投資先の盛衰を本気で心配するようになるからである。
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「ローマ軍は兵站で勝つ」といわれたのも、兵站という確定要素をおろそかにしないではじめて、精神力という比確定要素の完全な発揮も望めるとわかっていたからだった。
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隣り合って住む民族同士は、仲が悪いのが常である。仲が良かったとすればそのほうが異常で、ゆえに幸福な状態ということになる。
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キリスト教の台頭は、経済の繁栄には役立たなかったということがわかる。現世よりも来世を重視すれば、これまた当然の理でもあるけれど。
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人間は、飢える心配がなければ穏健化する。過激化は、絶望の産物なのである。
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ローマ人が人材登用にコネを重要視したのは、彼らの現実主義的性向のあらわれの一つであったとさえ思う。コネとは、責任をもってある人物を推薦することだ。人格才能ともに優れた人が推薦するならば、人格も才能も優れた人が推薦される可能性も高くなる。もちろん、この場合でも常にリスクはあった。しかし、客観的な試験ならば、無能や悪質な行政官を産むリスクは回避できるであろうか。
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