ローマ人の物語39 キリストの勝利(中)

権力とは、他者をも自分の考えに沿って動かすことのできる力であって、多くの人間が共生する社会では、アナルキア(無秩序)に陥ちたくなければ不可欠な要素である。
(59ページ)

官僚機構は、放っておくだけで肥大化する。それは彼らが自己保存を最優先するからで、他の世界とはちがって官僚の世界では、自己の保存も自己の能力の向上で実現するのではなく、周辺に同類、言いかえれば”寄生虫”を増やしていくことで実現するのが彼らのやり方だ。ゆえに彼らに自己改革力を求めるくらい、期待はずれに終わることもない。官僚機構の改革は、官僚たちを「強制して服従させる力」を持った権力者にしかやれないことなのである。
(60〜61ページ)

司教とは、キリスト教会の組織では、自分の教区に属す教会資産を思いどおりに使える立場にある。また、自分の管轄下にある司教区に住む人々に対しての司法権までにぎっていた。こうなればもう、立派に現世の権力者である。カトリック派とアリウス派の抗争がどちらか一方が敗北するまで激化を宿命づけられていたのは、現世の権力が介在していたからであった。
(117ページ)

最高権力者は批判にさらされるのが常であって、批判は、権力をもっていない者たちに許された唯一の反撃の手段であるとでも思って諦観し、ペリクレスユリウス・カエサルがしたように、放って置くしかないのだ
(121ページ)