ローマ人の物語27 すべての道はローマに通ず(上)

敷石のふちが丸くすり減っているのは、ローマ帝国が衰退しはじめて以後の長い歳月にわたる、メンテナンスの欠如による減少であることがわかるはずだ。そして、メンテナンスの欠如とは、それを担当していた組織が機能しなくなるから生ずる現象であり、国家が機能しなくなるということは個人にも影響を与えずにはすまない、ということにも、想いを馳せるようになるだろう。
(94〜95ページ)

ピラミッドを築いたエジプト人と街道網を張りめぐらせたローマ人のちがいは、エジプト人は必要と思った資材は遠方からわざわざ運ばせても使う、と考えた人々であったのに反し、ローマ人のほうは、現地で調達可能な資材を活用することがまず第一、と考えた人々であったところだろう。そしてもう一つのちがいは、ただ一人の人間の死後のための工事か、それとも、より多くの人間の現世の生活に役立つことを考えての工事か、にもあった。ローマの公共工事のモットーは、堅固で長持ちし、機能性に優れ、それでいて美しい、である。
(120〜121ページ)

ローマ人が創造した傑作は三つあり、それは街道、上水道、下水道、の完備であると。
(121ページ)

凱旋門とは、闘いに勝って帰国した将軍と兵士たちを迎えるために考案された、ローマ独自の建築様式である。
(135ページ)

インフラ工事でも凱旋門を捧げられたという一事くらい、ローマ帝国における公共事業の重要性を示すこともないのである。
(138ページ)

石しか使用しなかったローマ時代の橋でも、テヴェレ川にかかっていた十一本のうちの五本までが現代でもしようされつづけ、かつてのローマ帝国の全域ならば、三百を超えるローマ時代の橋が、二千年後の今でも人や車を渡しているのである。
(147〜148ページ)

一つの目的を完璧に遂行できるようにつくられたシステムは、他の目的にも転用は可能になる。
(171ページ)

システムとは、衆に優れた力に恵まれた人のためにあるのではなく、一般の人々の力に合致し、その人々の必要性までも満たすものでなければならない。それゆえに、創案者個人の能力とは無関係であるべきで、実際そうでないと機能できないし、システムとしても継続性をもてない。
(172ページ)

賢者は歴史に学び愚者は経験に学ぶ、という格言があるそうだが、私個人では、学ぶのは歴史と経験の両方でないと、真に学ぶことにはならないのではないかと思っている。
(183〜184ページ)

政治の不安定は、経済の悪化につながらざるをえない。
(228ページ)