知の武装

最近の日本外交は、旧大日本帝国陸軍の悪しき伝統を引き継いでいるようで、目標を明確に設定しようとしない傾向が強いですね。目標も設定しないまま、ただただ「一生懸命やっています」と姿勢ばかりを強調する。その評価を、計画を企画・立案した人がするわけですから、「成功」か「大成功」という結論にしかならないんです。その成功と大成功の集積が、大東亜戦争では破局につながったわけです。
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仮にアメリカのインテリジェンスのプロから「拉致被害者と特定失踪者は合わせて何人ですか。もし北朝鮮が核・ミサイルを東京に落としたら、何人死ぬことになりますか。拉致と核・ミサイルとどっちのほうが脅威ですか」と質問されたら、日本の政治家や外交官はどう答えるのでしょうか。・・・「無限に重要な事柄と、無限に重要な事柄の比較は実に難しく―」とか言って、ごまかすしかない。やはり日本の立場は、論理的には非常に弱いんです。
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反日包囲網を紡ぎあげる「クモの糸」は、慰安婦問題であり、歴史認識問題です。これなら、日本の同盟国にしてスーパー・パワーであるアメリカをも、一緒に巻き込み、絡め取ることができますから。
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(スノーデンの人物像について)「NSA(米国家安全保障局)の契約社員としてシギントに従事しているうちに、「国家がなくても人類は生きていくことができるはずだ」というアナーキズム思想を抱くに至ったのだと思う。祖国を裏切る原因となったこの思想を、アメリカは公開の場で裁かなくてはならなくなるだろう。裁かれるのはスノーデン個人ではない。インテリジェンスと本質的に敵対する思想なのだ」
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遥かな道義的高みに拠って、中国の力の政策に抗うことこそ肝要です。その上で凛として国土を守り抜く姿勢を示す。さらに、最後の最後の拠り所として、中国に痛打を浴びせる力を蓄積しておく。
この三つの、どれか一つでも欠けてしまえば、やがて尖閣諸島は中国の手に落ちてしまうでしょう。
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「帝国」というのは必然的に多元的ですから、インテリジェンス機能が高くなければ治められません。・・・もう一つ、これも必然的にですが、保護主義を採用することになるんです。
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未曾有の危機に直面して、求められるのは知識などではありません。専門家の言うことをよく聞いて、余計な喧嘩はしない。これという人に思い切って任せる。物事の判断が的確で、有能な人を嫉妬したりしない指導者が必要なのです。
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