ローマ人の物語43 ローマ世界の終焉(下)

自分自身に自信が持てなくなった人はしばしば、ちがいをことさら強調することによって自信をとりもどせた気になるからだ。
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少数の勝者で多数の敗者を統治しなければならない場合の鉄則は、既存の統治階級の温存、につきる。既成階級を変革したくとも、それは後に延期すべきで、当面やらなければならないことの第一は、既成階級を安心させることなのだ。
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信仰とは各人の心の問題だから脇に置いて、他の分野で共にできることを共同して行うとする考え方は、多神教にしか可能でないのかもしれない。それゆえ一神教徒にでも期待できるのは、「共生」が限界であるのかも。
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真の問題は、誰によって支配されるか、ではなく、どのように支配されるか、であったのだから。
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政治でも軍事でも行政でも、人間世界の多くのことは「苦」を伴わないでは済まない。ゆえにそれを国民に求めねばならない為政者に必要な資質は、「苦」を「楽」と言いくるめることではなく、「苦」は苦でも、喜んでそれをする気持にさせることである。
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人材を登用するだけでなくその人材を活用する能力が為政者には欠くことは許されない資質であることは、人種にも民族にも宗教にも関係のない、個々人の器量でもあるのだった。
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宗教とか信仰が理性の分野のものではない以上、不都合ではないからというだけの共生は、神の意に背く背信行為になり、それゆえに糾弾さるべきと考える人が必ず出てくる。
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東ローマ帝国皇帝のユスティニアヌスによるアテネのアカデミア廃校公表に対し)
疑問をいだくよりも服従することを人間の「徳」と考える時代に、決定的に入ったということであった。
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人間的なしがらみが薄いと、なぜか人間は私腹を肥やすことに熱中するようになる。
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ナポレオンだったか誰だったか忘れたが、優れた二将は凡なる一将に劣る、と言っている。
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