海の都の物語(5)

■[本・映画]海の都の物語(5)

人間、なにが得になるかはわからない。要は、運がめぐってくるのをじっと待つことだが、待つには、待つことに耐えられるだけの体力が必要だ。ヴェネツィアがスペインやポルトガルの挑戦に耐えられたのは、彼らの”多角経営”のおかげでもあった。
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外交というものは、思っていても胸の中におさめて、口には出してはならない時もある
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十六世紀初頭のイタリアは、・・・ドイツ、スペイン、フランスの餌食にされつつあった。イタリアは、ヨーロッパの戦場と化したのだ。・・・潟に浮ぶヴェネツィアの街だけは、戦火に見舞われずに済んだだけでも、他国に比べて幸運と言えた。
・・・ロンバルディアトスカーナ地方からヴェネツィアへ、大量の職人が移住した。彼らは、ヴェネツィアで働くのが、いくつかの点で有利と判断したからである。
第一に、戦場になる危険はほとんどないこと。
第二に、政情が安定していて内乱の心配がないこと。
第三に、原料確保と完成品を売るのに有利であること。
最後は、政府が熱心であることだ。これでヴェネツィアは、苦労もせずに、技術導入にも成功したことになる。
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人間誰しも、失うものがあり、自治への欲求のはけ口さえ与えられれば、いたずらに過激化するものではない。
(114ページ)

自分もいつかなれる、と思っていれば、人は縄張り争いなどはしない。
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ヴェネツィアの交易は、資本のない者も経営に参加でき、それによって資本の蓄積も可能なようにできていた。・・・工業は、資本のない者には職人としてしか仕事をする場を与えない。
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比較的良く運営されてきた制度を変えるのは、誰にとってもむずかしい。
(178ページ)